カメラ界三大うっかりのひとつにオールドレンズを買うというものがあり、それに従ってレンズを1本買った。

Sigma fpにPlanarを装着したものが机上に置いてある

なお三大うっかりの残り2つは、カメラボディを買う、オールドではないレンズを買う、三脚を買う、カメラバッグを買う、ストロボを買う、レンズフィルタを買う である。

Contax T* Planar 45mm (G)だ。詳しいことはよく知らないのだが、レンジファインダー式のContax Gというカメラがあり、Carl ZeissのT* コーティングのレンズがラインアップされていたらしい。一部を除いてマウントアダプタでミラーレスに付けることができる。Contax Gにした理由はあまりないのだが、ゴールド系のデザインが好みだったというのと映りの評判がよいというところ。

ミラーレスで使えるといってもビオゴンやホロゴンはCMOSセンサと合わないのか色被りが派手に発生する模様なので、さすがにこれは避けて、好みの焦点距離である35mmか45mmのうち入手しやすそうな45mmを選択した1994年の製品である。そろそろ30歳。

マップカメラ、メルカリ、Amazonで適当に出ているやつを比べて、AmazonのがよさそうだったのでAmazonで買った。約45000円。なにせ古いので、動作確認済みか、カビや曇りがないか、くらいは確認してから買った方がいい。キャップやフードは付属している出品がほとんどないが、単体だとメルカリで安く売っている。そのへんで適当に調達した。

そしてマウントアダプタだ。メジャーなのがEマウントで、なんとAF対応のものも発売されている。そのような無粋なまねをするつもりはないのでMFで十分だし、なによりαはコンパクトなレンズをつけるにはでかすぎる。そこでSigma fpにつけるべく、Lマウント対応のアダプタを調達した。164ドル(+送料 約20ドル +関税少々)なり。いま見たら一時的に品切れになっていたので私が買ったのが最後だったっぽい。eBayでも売っている。

Sigma fpにPlanarを装着したものが置いてある。こんどはレンズが真上に向けてあり、フードも装着されている

Lマウント対応だと他に選択肢はないのでこれを買うしかないが、正直いって出来はよくない。すくなくとも2万円近い値段に見合うとは思えない。レンズを外すレバーが思うように動かず、しばらくガチャガチャやらないとレンズが外せない(適当にやっていたら少しレバーが曲がった……)。

Sigma fpにPlanarを装着したものが置いてある。フードがついていて、水平に置いてあり、レンズが手前に向いている

ちなみに、レンズをボディから外した状態だと絞りリングの指標がずれるがこれは仕様らしい。レンズを装着すると正しい位置にくる。壊れたやつをつかまされたのかと思って焦った。

そしてこのマウントは(レンジファインダーだとあたりまえなのか?)フォーカスリングがマウントアダプタにある。その関係かフォーカスリングの感触もあまりよろしくない。しっとり重い感触ではあるのだが、途中でメカのガタつきがあるのを感じる。このあたりも含めて古い機械を操作しているという感触がすごく、これを楽しむ必要がある。


そんなこんなで(何番煎じだという話だが)Planar 45mmをSigma fpにつけて散歩をしてきたので作例を上げておく。以下すべてSigma fpで撮ったRAWをLightroomでAdobe landscapeプロファイルでストレートに現像したものだ(露出補正のみしてある)。撮影した絞りは忘れたが、2~5.6が大半だと思う。fpでウォームゴールドなりなんなりにすると簡単にそれっぽさが出てしまうのであえてLightroomで何もせず現像した。元サイズの画像(6000x4000)はGoogle Photoに上げておいた

青空を背景に桜の枝。8割くらい花が咲いている

同じく青空を背景に桜の枝。8割くらい花が咲いている

ピント面はけっこうシャープだがその前後のところがオールドレンズらしく若干ふわっとしている。

しだれ桜の枝。6割くらい花が咲いている

背景に細い枝があるようなところだとうるさく感じられるような気もする。

水平に植え込みがあり、その前に3つの石碑が並んでいる

確かこれはF5.6くらいまで絞っていたと思うが、そうすると周辺まで均一に写る。

大きな切り株

切り株表面の質感の描写、満点じゃないでしょうか。

縦位置の構図。構図左下から右上へ細い水路が流れている。水路の左の壁が石垣になっていて一面に苔が。

若干水面に色がついているような(軸上色収差?)。

杉並木と参道を正面から

こちらも軽く絞って遠景。特に破綻なく全体が描写されていてすごい。

獣道に椿の花が落ちている

草むらにスミレのような花が何本か生えている

背景がうるさいような感じもあるがピントを合わせた花の描写はグッド。

大きく電信柱が立っているのを見上げている。背景には木の枝と空。

アウトフォーカス~背景の描写とあいまって、こういうところでSigma fpのウォームゴールドを使うとインスタントエモという感じになる(上の写真はRAWから現像なのでカラーモードを反映していないが、下は撮って出し)。

スミレのよう花が一面に咲いている花畑

スミレのよう花が一面に咲いている花畑

スミレのよう花が一面に咲いている花畑

これくらいぼけてるとあまり背景のうるささは気にならないか。ただ最短撮影距離が50cmと(現代の感覚からすると)寄れないのでガッと寄って全てをぼかすみたいな使い方はできない。

桜の木を見上げている。右上端に太陽があり、左下に緑色の目立つゴーストが出ている

T* コーティングの実力を見せてもらいましょう(関係あるのか知らんが)ということで少しいじめてみた。画角に太陽を入れると派手なゴーストが出る。この濃い緑のゴーストはモダンなレンズでは見ない色だと思う。なかなか面白い。

カフェのテーブル。トレイの上にケーキののった皿、フォーク、アイスカフェラテがある

前述のように寄れないので少し撮りづらいが、とても素直で扱いやすい。


総じて扱いづらくて困るということがあんまりなく、撮りやすい良いレンズだと思う。私のようなオールドレンズ初心者には良さそう。もちろん現代のレンズと比較するとピント面のシャープさとか一貫性のあるボケとかの点で劣る点はあるが、味がある範囲に十分収まっている。30年近く前であることを考えると当時としては相当優秀なレンズだったのだろうと思われる。

ちなみにこのシリーズだとContax Gの90mmが14000円くらいで手に入るようなので、これも悩むところだ。