アーロンチェアといえば言わずと知れた高級オフィスチェアの代名詞である。一度は試さないと気が済まない。ミーハーなので。

ちょうど10年前にエルゴヒューマンを新品で買い(たしか当時8万円前後だった)、自宅ではずっとこれに座っていた。この間いろいろなコードを書き、同人誌を書き、ツイッターに興じ、コロナ以後は仕事もこの上でやっていた。大きな不満や体の不調もなくまだまだ使えるとは思うものの、いかんせん10年も使い倒しているのでメッシュ表面の毛羽立ちや各所の使用感が目立っており、買い換えてもよいかなという機運が徐々に醸成されてきていた。

候補選びと購入

買い換えについてしばらく前からいろいろ考えていたが、ハイエンドのなかで座面メッシュ(デブなので)のものとなるとオカムラのコンテッサかアーロンチェアあたりが候補に挙がってくる。

エルゴヒューマンは大型のオーソドックスな椅子なので、この方向性で考えるとオカムラのコンテッサセコンダがよかろうと思われる。実際に店頭で座ってみた感じ何一つ不満なくエルゴヒューマンの置き換えになるだろうことは容易に想像がついた。

一方でアーロンチェアは座り方を矯正して仕事に集中させるための椅子という感じである。ハーマンミラーの絶対にヘッドレストをつけないという狂気じみた思想からはユーザをリラックスさせる意図は全く感じられない。あまつさえ前傾モードがあるくらいだ。

アーロンチェアの特徴としてはサイズ展開があり(小さい方からA, B, C)、体格に合った椅子を選択せよということになっている。公式ページに身長・体重からサイズを決めるチャートがあるが、私は ”A or B”であった(私のように小柄な男性であればほとんどこうなるだろう)。店頭で座ってみた感じ、Aでジャストフィットだったので、買うならAがよいなと思った。ジャストフィットというのはすなわち左右の遊びがまったくないため、アームレストが完璧な位置にあるということで、椅子の上にあぐらをかくことができないということでもある。

私は椅子の座り方が終わっているので、左肘を机についているか後ろに大きく寄りかかっているかの状態が多く、この先中年男性としてやっていくにあたりこの体勢は改めた方がよいと感じていたので、いっそアーロンチェアにしてみるというのもよいと思われた。しかし新品で25万円という値段でそのギャンブルに出る気にもならず、コンテッサセコンダにするか、いやしかしこの座り方をもう10年やるのか、ううむ、とうじうじ悩んでいた。

ところでオフィスチェアは中古の売買が盛んである。そしてアーロンチェアは中古が安いというのは広く知られており、有名店であるオフィスバスターズには常に多数の在庫がある。コンテッサの中古は新品と比べてそこまで安くなっていないが、アーロンチェアの中古はだいぶ安く、5~10万円で買うことができる1。が、世間のオフィスに導入されているアーロンチェアはBタイプばかりらしく、オフィスバスターズの在庫は(おそらく)すべてBタイプであった。

そんな中で適当にぐぐっていたところ、ココロという店舗でタイプAの中古が売っているのを見つけた。なんと5万円+消費税+送料(約5000円)で、約6万円である。この値段なら失敗しても諦めがつく(売れるだろうし)。

この時知ったがアーロンチェアには細かいバリエーションがあり、前傾やランバーサポート/ポスチャーフィットの有無2、肘掛けの可動/固定などがオプションになっていたりするらしい。私が買ったのはフル装備だった。 またアーロンチェアは一度モデルチェンジをしており、その前のもの(クラシック)だった。クラシックの方が当然安い。この椅子を買うのにアームレストの調整や前傾ができないものを買うのはあまり意味が無いと思うので、古くてもフル装備の方がよいと思う。

メンテナンス

ということで貧者のアーロンチェアが届いた。ランクBだかなんだかということで相応の古さを覚悟していたのだが、全然そんなことはなく体感的にはかなりきれいな状態だった。もちろん新品ではないにせよ、できたばかりのオフィスに置いてあるくらいの感じ。

とはいえ自宅で使うので、タイヤは掃除するくらいならさっさと変えてしまった方がよい。これは適当にAmazonで対応品が売っているので交換する。てこをきかせてマイナスドライバーで引っ張り出して、あたらしいのを押し込むだけ。

これで万全かと思ったのだが、1つ大問題が発覚した。アームレストがマジで臭い。なんというか、おっさんの加齢臭のような臭いが染みついておりいくら拭いても消えることがなかった。頭をかかえたのだが、アームレストのクッション部分を交換することができるとのことで部品を発注した。Amazonに互換品も売っているが、純正品が5000円くらいで買えるのでそちらを注文した。

届くまでしばらくかかるので、それまではアームレストをクレラップで巻き、上に不織布をテープのりで貼り付けて使うことにした。もうどうにでもなーれ状態のDIYは楽しくてよい。

貧者のアーロンチェアどころか廃品の椅子に座っているスラム街のおっさんである。数日間この状態で運用したあと交換したが、正直にいうと表面の感触はこのコストコの掃除用の不織布の方がよかった。交換はゴツいネジを計4本はずしてつけるだけ。相手が樹脂なので、けっこう力は要る。

ということでこちらが完成品。悪臭は完全になくなり、状態にまったく不満はない。ただ交換可能な純正品があるなら交換しておいた方が良いなと思ったので、若干へたっている感のあるランバーサポートと座面下のクッション(通称バナナクッション)も追加で注文して交換した。

ランバーサポートは単に見た目が新しくなっただけで質的な差は感じられなかった。バナナクッションも同様かと思いきや、新しいものはかなり反発が強く、これに交換(メッシュ下に押し込むようにして装着する)すると全体の張りが一段強くなったように感じられる。おそらくこの状態の方が正しい状態に近いと思われるので、これは交換した方がよかった(多分)。バナナクッションは安いし定期的に交換するのがよさそう。

座った感想

この手の椅子は長く座ってみないとわからないと思っているので、現段階で買って良かったのかどうかはわからない。ただ明確に悪い姿勢で座る時間が減ることは確実である。左肘をアームレストについていたが、この椅子であれば椅子の左右幅が狭く、アームレストに肘を突いても体が左に傾かない。これはたぶん体に良い姿勢だと思う。椅子の上にあぐらをかいたり、右足首を左膝の裏に置くような座り方も(不快なので)ほとんどしなくなった。いわゆる良い姿勢でいる時間が長くなるだろう。

ヘッドレストがないのは本当にどうかと思うのだが、上体をちゃんと起こしていればヘッドレストなどいらないだろう、これがベストなのだ、という椅子さんサイドの主張は強く感じるので、まずは言われたようにしてみる。若干肩が凝るような気がしなくもないが、どうだろうな……。

前のエルゴヒューマンのときは椅子の上でしょっちゅう寝落ちしていたのだが、これだと後ろに思いっきり体を預けたとして背もたれ上端が肩甲骨にあたるくらいなので、普通に目が覚めると思う。これもまあ良いことなのかもしれない。

あとは若干座面が固めなので、太ももの裏(の脚の付け根に近いあたり)に若干の圧迫感がある。これが慣れや座り方により解消するのかどうかは気になるところ。前傾すると割と良い感じに座れる。

まとめ

10万以下で試せる手としてはかなりよいと思う。しばらく座ってダメならコンテッサ買います。

  1. ロングセラーなので単に古いものが多いという要因もあると思われる 

  2. ランバーサポート装備のものとポスチャーフィット装備のものがあり、後者の方が新しいらしい。交換も可能なのでやってみてもいいかもしれないが、私は腰にあまり不安を感じていないのでそこまでの気合はない。eBayで送料込みで2.5万円くらい。