天体写真、星景写真、むずかしい問題である。言うまでもないことであるが僕はど素人であるので、「適当な一眼レフを持って写真を撮るためのざっくりとした方法」を書いてみることにする。赤道儀とかそういうのは突然大金が手に入ったら手を出してみたいなどと書いていたが結局赤道儀を買ってしまった。読者諸兄におかれましてはうっかり天体撮影にはまって私の轍を踏むことのないようお気を付けいただきたい。

ともかく赤道儀を使った撮影については僕の中でもまだまとまっていないので、本稿では主に赤道儀を使わないカジュアルな天体撮影について述べる。赤道儀を用いた撮影およびスカイメモSのレビューなどはこちらを参照されたし。

DSC02538
α6000 / SEL24F18Z /  24mm /  ISO 2000 / F2.0 / 10.0sec.

撮影機材

まず機材をかんがえる。

  • 一眼カメラ+レンズ、あるいは高性能なコンパクトデジタルカメラ
    • バッテリ (寒いなか長時間露光するのでバッテリは多めに。とくにミラーレスはすぐ電池がなくなるので、ありったけ持って行こう)
    • メディア(タイムラプスでもやらない限り、数百枚撮影することはあんまりないと思う。ただ、RAWで撮るので容量は余裕をもって)
  • 三脚

最低限、上記が必要である。

![α6000 + SEL24F18Z (フラッシュもついてるけど関係ない)
 

カメラ

カメラはできるだけ高感度ノイズの少ないもの。傾向としてはセンサーサイズが大きいもの。m4/3よりAPSがよいし、フルサイズならもっとよい。とはいえ進化がすごいので、最新のAPSが数年前のフルサイズを凌駕することもざらにある。お金があるならα7s mk2とかα7R mk3がいいんじゃないですかね(棒)。一般的に画素数が多いカメラを使うと等倍で見たときの高感度ノイズは増える傾向にあるけど、同じ画像サイズにすると縮小のときにノイズが消えていくので、最終的な出力サイズ次第では画素が多くてもノイズの出方が大差ない場合もありそう。A3でプリントするなら16~20Mpx, webに上げるなら8Mpxもあれば十分という感じ。ぼくはSonyのα6000を使っていました。今なら後継の6300の方がいいかも(高い)。といいつつ結局α7Riiiを買ってしまったので、憂いは無くなりました(財布の軽さ以外)。

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コンパクトカメラでもセンサーサイズが1インチ以上あるような上等なもの(RX100シリーズとか、G7Xとか、GR(APSのやつ)とか)であれば大丈夫そう。ただ、後述するように星にはオートフォーカスが合わないので、MF(マニュアルフォーカス)ができることが前提。事前にMFがちゃんとできるか確認しておきましょう。

蛇足ですが、いわゆる一眼レフ(光学ファインダーがあるやつ)より、ミラーレスの方がおすすめです。理由は、

  • (画質・感度について)同じ性能ならば軽い
    • 天体撮影にAFは不要なので、一眼レフのメリットのひとつであるAFの速度が活かされない
    • カメラが軽ければ三脚(あと赤道儀もね)も軽くて済む
  • ライブビューでのMF操作がしやすい、ような気がする
    • α6000だと、MFにしてフォーカスリングを回すだけで画面が等倍に拡大されて、星を見ながらMFができる。
    • D800を使っている知人は、ライブビューで空をうつすと暗すぎて星が見えないのでOVFでがんばるといっていた(なにか良い設定が実はあるのかもしれないが…)
  • ミラーレスに限らないが、画面がチルトするものが多い
    • 三脚に乗せて空を向けたカメラの背面をのぞくのはけっこうつらい。もっと言うと光学ファインダーをのぞくのは本当につらい。

といったところ。APSくらいのミラーレスが普段使いと天体撮影のバランスが撮れていて良いと思う。まあとにかく、買える/使える範囲でもっともセンサの大きいカメラにしましょう。

レンズ

レンズは好みの画角のなかで、もっとも明るいものを。贅沢をいえばF/2.8より明るいものがよいが、きりがないので、まずはお手持ちのレンズで明るいものを。単焦点はズームレンズに比べると明るくて安いことが多いのでおすすめ。各社35から50mmくらいのF1.8~2.8くらいの単焦点レンズをお求めやすい値段で出しているので、せっかくなら1本買っておくとよい。Canonだと50/1.8なんかが異常なコストパフォーマンスで有名。

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SonyのE-mountだと50mm/F1.8が安くて明るいけど、長くて使いづらいかも。35mm/F1.8はちょっと高い。シグマのF2.8単焦点でもよさそう。画質の評判もいいし。

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画角(=レンズの焦点距離)について。特定の星座ひとつ(オリオンとか、カシオペアとか)くらいを撮影するなら換算35-50mm前後のものがよい。APSなら24-35mm。地上の風景とあわせて撮りたい、ということであれば、広角が必要になる。換算18mmから35mmくらい。我々サラリーマンが週末に行くようなところの場合、残念ながら地上付近の空は大抵明るいので、広角でできるだけ上の方の空を写したくなる。僕はほとんどSEL24F18ZとTouit 12mmの2本で撮ってる。

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もっと言うと、コマ収差の小さい上等なレンズを買って四隅の星もしっかり円形に写したいところであるが、マジできりがない世界なので宝くじがあたったら考えればよいことである。そしたらOtusを買おう、それを支えられる三脚と一緒に。

三脚

三脚も細かいことをいえばきりがないのだが、最低限、まともなメーカのもので、耐荷重が自分のカメラ+レンズの倍くらいあるものを選べるとよい。ヨドバシで1万円くらい出すと2kgくらいまでいける三脚が売ってると思うので、ミラーレスのひとはその辺のを買いましょう。軽いのがよければ、もう1,2万円だしてカーボンのを。もちろん中級以上の一眼レフで機材が2-3kgある人はもっとしっかりしたのを買う必要がある。

これも蛇足だが、三脚の耐荷重の基準というのはメーカーによってまちまちなので、難しいところだ。ベルボンはかなり手堅い数字が書いてあるので、2kgと書いてある三脚に2kgのカメラを乗せてもなんとか天体撮影可能だと思う。マンフロットとかは攻めまくった数字[ref]製品が壊れない上限という感じ。英語のページだとsafety payloadと書いてあるくらい。夜景の撮影をしようと思うと、この数字に惑わされず上限を見極めてやる必要がある。[/ref]を書いているので、話半分に聞いておく必要がある。耐荷重の数値よりは、最も細い足の径で判断するとよい。また、一番細い最後の一段を伸ばさず使うことで剛性を上げることができる。あと、同じ重さでも画角が狭いほどブレやすくなってしまう。広角ならOKだけど望遠だとつらい、みたいなこともままある。ただ、望遠(100mm~)だと露光時間も長く必要だし、三脚で撮るのはせいぜい70mmくらいまでかなあ、という感じもする。

星を撮るときは風が吹いてるかもしれない中で10秒くらい露光するので、がっしりしている必要がある。3000円くらいのやつは集合写真用なので、そもそも視界に入れてはならない。僕はベルボンのE433Mとマンフロットの055(アルミ、めっちゃ重い)を使ってます。E433Mはカーボンで軽くて剛性があっていい感じ。フルサイズでもミラーレス+広角レンズならこれで十分。赤道儀を乗せるときとかフルサイズ一眼レフをなにかのまちがいで借りることになったときは055を使う。

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まあとにかく、カーボンじゃなくてもいいので、がっしりしたやつを買いましょう。おみせで3000円のと10000円のと30000円のを立てて上から押して比べてみれば「がっしり」の意味がわかると思う。三脚にカメラを載せて、ファインダーをのぞきながら脚をトントンと叩いてみましょう。どんな良いカメラとレンズと風景があっても三脚がへにゃへにゃだと全て瓦解するので、ここは大事です。

その他の持ち物

さらに、下記があればよりよいかもしれない。

  • レリーズケーブル/赤外線リモコン
  • ソフトフィルタ
  • インターバルリモコン

あとで述べるが、基本的には秒単位での露光となる。また夜景を撮るときもそうだが、手でシャッターボタンを押すときのショックでぶれたりする。ので、リモコンがあるとよい。無いときは2秒セルフタイマを使えばOK。また、バルブ撮影(30秒以上)をしたければレリーズケーブル(有線リモコン)が必要。ソニー用の純正は高いので、サードパーティのやつを使ってる。単に撮影する、押しっぱなし(BULB用)にするだけでなく、インターバル撮影の機能を持つものにしておくとよい(どっちにしろ安いので)。

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これなんかは指定した秒数のあと指定した露光時間(1秒~数時間)で指定した枚数だけ撮影する、という機能があってとてもよい、が、α6000でうまく動かなかった(なぜか余計な短時間露光を1回挟むという症状が出るが、まあ我慢できる)。α7R・α7Riiiではうまく動いている。

EOS Kiss X2 / 28mm / ISO 200 / F7.1 / 20min.
バルブ撮影。EOS Kiss X2 / 28mm / ISO 200 / F7.1 / 20min.

バルブ撮影、最近やってないなあ。ちなみに、だいたいのカメラは秒単位で露光したあとにノイズリダクションが走る。だいたいこれは露光時間と同じだけ時間がかかるので(たぶん、ダークノイズを除去するんだろう)、20分撮ったあとは20分カメラが使えなくなる。(故障かと思った)。嫌なら事前にオフにしておくべきだが、処理としては必要な気がするので悩ましい。

あと、これは星が綺麗なところにいったときにありがちなのだが、星がたくさん見えて綺麗なんだけど、撮ってみると星が多すぎて(しかも肉眼と違って明るさの差が分かりづらいので)何がなんだかわからない写真になるパターンがある。

DSC05695-2
ソフトフィルタなし
DSC00183
ソフトフィルタあり。

星座を単体で撮るようなときは、ソフトフィルタがあるとなんかそれっぽく撮れる。うさんくさいとも言う。お好みでどうぞ。あまり高くないので買っといた方がよいと思う。Kenkoのプロソフトンがおすすめ。というか他のは星を撮るにはあまりよくないみたいなレビューが散見されるので、買ったことがない。

また、一晩写真を撮るぞと意気込んで出かけていって本当に一晩晴れ渡ったときは意外と暇だったりするので(贅沢な話だ)、インターバル撮影などを試してみるのもよいのではないだろうか。ひたすら静止画をとり続け、あとから動画にすればよい。カメラによっては一定間隔で撮影し続ける機能がある。ない場合は前出のリモコンを使う。ぼくはNEXシリーズを使っているので、こんな涙ぐましい真似をしながら撮影している。また、α6000など、PlaymemoriesCameraAppsに対応した世代のソニーのミラーレスであれば、タイムラプスのアプリが使えるので、勝手に撮影を続けてくれる。(ただUIが謎なので、RAW画像の静止画を保存するように設定できているか確認をよくした方がよい)。と思ったらα9/7RiiiでApps機能がなくなってしまい、タイムラプスは使えなくなってしまった。なんでやねん。連写にして、リモコンでシャッターを押しっぱなしにしておきましょう。

[embed]https://www.youtube.com/watch?v=5eNyFg_m0D0[/embed]

こんなのとか、

[embed]https://www.youtube.com/watch?v=IsRtBPA7Geg[/embed]

こんなのを作ったりしている。HD画質でみてね。

 

 その他の装備

後で述べるが、行き先はおそらく郊外になるだろう。そして根性次第だが一晩撮影することになるかもしれない。基本的に寒くて暗いという状況を前提にしておく必要がある。初日の出とか、死ぬほど寒いじゃないですか。あんなかんじ。あそこで一晩。予想しているより相当寒いので、とにかく厚着で。

私の場合、防寒装備は

  • 下半身
    • ジオラインEXP.: 厚手のヒートテックでもいいが、こちらの方が汗で冷えないためおすすめだが高い
    • ユニクロの綿入り極厚防風パンツ(ブロックテックエクストラウォームイージーパンツ): マジで暖かい、最強
    • ウィンドブレーカー: さらに寒ければ上に重ねる用
  • 上半身
    • ジオラインEXP.
    • フリース地のあたたかいハイネック
    • 起毛のパーカー
    • ユニクロのウルトラライトダウン: 暖かくて薄いので重ね着に向いている
    • ダウンジャケット
  • その他
    • カイロ/ハクキンカイロ
    • 手袋(防風, スマホ対応のもの)
    • 防寒ブーツ:適当な安いやつ。起毛で風を通さず暖かい
    • 貼るカイロ: 背中にはる。あと靴用。

という感じ。ジオラインはマジで暖かい。

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あと手袋。登山グッズ屋でいろいろ見てみるとよい。薄手でカメラが操作可能、風を防ぐ素材、できればスマホ操作可能、あたりを重視して5000円くらいのものにした。フリース地のものは多分カメラの操作ができないと思う。大型一眼レフ系ならいけるかもしれないが、ソニーの小さいボタンは無理。

  • 防寒具(動かないとマジで寒い)
  • 懐中電灯
  • あたたかい飲み物
  • Red bull
  • カイロ・マフラー(カメラ用)
  • 曇っても折れない心
  • ガムテープ or 養生テープ
  • レジャーシート(地面が濡れてると萎える)

懐中電灯は必要。明るすぎるとむしろまぶしいので、できれば暗いもの。あと、光が赤色だとなおよい。暇ならセロハンでも貼っておくことをすすめる。人間の目は赤い光に順応しづらいので、懐中電灯をつかったときに明るいところに目が慣れにくい(らしい)。ヘッドライトだとなおよいですね。真っ暗闇でレンズ交換とかするし。

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おすすめはこれ。白色LEDライトとしてはしょぼい部類に入るのだが、赤色LEDがついていて、そのスイッチが独立していることが重要。白色LEDをつけずに赤色のON/OFFができるので、自分の目もやられないし周りに迷惑もかけずにすむ。そして安い。USB充電式だから電池も不要(赤色だけなら一晩楽に持つ)。防水性も皆無という印象だが、雨の日に星を撮りにいくやつはいるまい。

あと、よくある説明としてカメラが結露するのでカイロを貼ってタオルをぐるぐるまきにする、というようなのを見かけるのだが、僕はほとんど結露したことがないので持って行かない。(夏の撮影や湖畔での撮影で結露しまくったので、買いました)必要でした。暖かい部屋から寒い場所へ出したときに結露することがまれにあるが、それは放っておけばよい。逆に時間が経って夜露が降りてきて何もかもぬれる(そしてそのまま凍る)ことがあり(特に湖畔など、湿度が高いところでは冬でも起きる)、このときにヒーターが必要。

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私はこれを使っている。うっすら曇ったかな?というくらいのときに巻いてしばらく待つと曇りが晴れてくる。そのあとは巻きっぱなしにしておけば曇らない。しっかり曇ってしまうとこれだけではどうにもならないので、カイロなどを巻いてなんとかするしかない。消費電流は700mAhくらいだったと思うので、小さめのバッテリだと厳しいかもしれない。

あと、オーロラを見に行った人の弁では、マイナス20度だか30度だかになるのでバッテリがほぼ動かないらしく、カイロを貼ってぐるぐる巻きにしないとまずすぐバッテリ切れになってしまうとのことであった。そのくらいエクストリームなところに行く人は持っていきましょう。0度くらいならたぶん平気。

レンズによっては上を向けてほっとくとズームやフォーカスが動いてしまうものもある。インナーフォーカスであれば固定は不要なのだが、ぐりぐり動いてるところが見えるようなレンズはテープで止めてしまうという方法もあるようだ。ぼくのレンズはたまたま単焦点でインナーフォーカスだから不要なのだが。カメラっぽくいくならパーマセルテープ、豪快に行くなら養生テープで止める。

車は、山道を走るならそれなりの装備で行きましょう。たまに凍結してることもあるし、ガソリンスタンドも遠いので、準備は念入りに。

では撮影編へ。