技術書典3に参加してきました
振り返りです。長いです。
申し込み
申し込んだのがいつだったか記憶にありませんが、「技術書典3を10月22日にやる」という発表をみて恐れおののいたのは忘れもしません。みんなきっと次の春だと思ってたよね?10/22なんて夏コミから〆切まで2ヶ月ちょっとしかないわけで、こんなスケジュールどう見ても自殺行為やんけとか言いながら申し込みました。病気かな?
参加するとなれば手持ちの既刊(夏コミ終了時、温度測定本が40部弱)だけでは心許なく、新刊を書くしかない、コミケが終わった後の2ヶ月でやるしかない。そうでした、人生とはそういうものでした。
テーマ決め
いきさつについては本に書いておいたので読んで頂ければよいのですが、なんで肉の固さを測りたいのか、というのを何度も聞かれたので書いておきます。長いんで飛ばして良いです。
「X(任意の言語、フレームワーク、ミドルウェア)だとパフォーマンスが出なかったからY(Xの代替となるもの)を使うことにしたったわwwww」 みたいなブログを書くとその日のうちに大量のマサカリが飛んできて殺されるというのは皆さんご存じでしょう。「パフォーマンスを改善するなら測定をしてボトルネックを適切に見定めろ」だとか、「言語の特性や内部の実装を理解すればそのような無駄な実装にはならないはずだ」だとかいうやつが無数にインターネットから飛んできて不用意な投稿者の命を奪うのです。
勢いよく書きはしましたが、このような正論のマサカリによってオーバーキルしてしまうことの是非はおいておいて、適切な理解と測定というのは何事にも必須のはずです。しかしこと料理となると、「肉を赤ワインに漬けるとやわらかくなる」だとか、「はちみつの酵素がうんたらかんたら」といった記述を見つけることはできますが、ここに定量的な根拠が示されているのを見たことがありません。ブルーオーシャンやんけ。
そんなわけで、料理の評価を定量的にする方法が欲しいなと思って目を付けたのが肉の固さだったのです。
原稿
つらい。専門外の内容なので、じつに厳しい。
9月頭から書き始めました。8月は遊んでいたことがわかりますね。最終的に68コミット、約5万字を書いて10/10に入稿しました。その後数回の直しを経て、開催当日の納品です。
部数
さて、気になる部数です。
過去実績として、技術書典2の低温調理器自作入門は200部刷って、当日164部売れ、委託と夏コミで完売しました。次のEffective肉の温度測定は夏コミのときに200部刷って、当日160部くらい売れました[ref]ちなみにBoothに委託したのはほとんど売れなかったので、残りがほとんど技術書典3での頒布でした。[/ref]。
普通に考えればまた200部刷るところですが、今回は300部にしました(狂気)。一応理由はあります。
- 技術書典2は雨だったので、晴れていて来場者数が伸びたら完売の危険がある
- 冬コミに当選した場合、それまでの間は別の趣味[ref]旅行・天体観測[/ref]で多忙であり、本当に新刊は出せない
普通に考えれば秋のこの時期は良い気候に恵まれるはずだし(伏線)、200部では冬コミに持っていく分がなくなってしまいかねない。よろしい、ならば300部だ、そういうことです。
爆死前提でキャリーカートも買って、2箱くらいなら持って帰れる体制はばっちりです(幸い、ダイレクト入庫のためほとんど不要でしたが)。
当日
書くまでもありませんが、当日は数十年ぶりの10月の台風による暴風雨という記録的な悪天候でした。
設営完了 #技術書典 pic.twitter.com/64EkkqpLNq
— naotaco (@naotaco) October 22, 2017
中に入ってしまえば天気は関係ないので、意気揚々と設営をするわたくし。今回はお品書きを入れる透明なホルダーを忘れたので適当にガムテープに止めています。売り子はSNSおじさんの@ymrlにお願いしました。
また、後払い決済用の余っていた端末を養生テープでスマホ立てに貼り付けて常設しておきました。
すべてを養生していくスタイル pic.twitter.com/NFxKSAzWOp
— naotaco (@naotaco) October 22, 2017
繰り返しになりますが、10月22日は20年ぶりの巨大台風が、10月としては珍しい本州上陸を果たし、たいへんな暴風雨でした。
そんな天気にもかかわらずたくさんの人に当ブースを訪れていただきありがたい限りです。開場直後、最初に来てくださった方は新刊を4部、数分後に戻ってきて既刊も4部買っていかれました。いったい何がおきたのかわかりませんでしたが、幸先の良いスタートでした。昼頃まではお客さんのテンションも高く、前回同様にけっこうなペースで売れていたという感触です。ただ、今回はこのハイテンションな時間があまり続かなかったような印象があり、販売数は伸び悩みました。
最終的な販売数は新刊121部、既刊39部(完売)でした。
悪天候のなかこんなに買っていただき本当にありがとうございました。しかしそれはそれとして、普通に爆死、よく言えば火遊びで火傷したという感じでしょうか。幸い、170部という大量の委託を顔色一つ変えずにComic ZINさんが吸い取ってくださったので大事にはいたらず、瀕死で踏みとどまりました。
会場・運営
奥のあまり混まない分野のあたり(婉曲表現)なので、前回と余り変わらない混み具合だと思いました。前回同様、きっと良い感じに調整して頂いているんだなという印象です。駅からのアクセスも(駅からビルまでの屋根が数十m足りないことを除けば)最高ですし、立ち読み/戦利品会場もあり、これ以上は望むべくもないのでは。
かんたん後払い決済ですが、双方が慣れてくると現金より速いかもしれません。決済のトランザクションがないのは大きいです。ただ、動物のemojiに慣れていないので、ネコ科の判別が困難でした…。猫?ライオン?虎?みたいな会話を何度かしました。来場者の金銭感覚を奪ってじゃぶじゃぶ買ってもらえるようになることを踏まえるとメリットは大きそうです。売り上げサマリをCSVでダウンロードできたらいいな、と希望を書いておきます。
収支など
さて収支のお時間です。121冊売れたので単純に72600円の売り上げになります。300部も刷っているので、印刷費と参加費でだいたいトントンくらいです、ぜんぜん赤字じゃないです(震え声)。部数を増やしても安全圏の下限でギリギリ踏みとどまれたし、まあまあだったんじゃないでしょうか。
と、涼しい顔をして書くつもりでした。経費を見直すまでは。
今回は部品と参考文献にけっこうな金額を使っていたので、レシートをかきあつめて計算してみたところ、部品代が19000円、本が8冊で16000円でした。合計35000円、どう見ても赤字で草が生えます。
ちなみにかんたん後払い決済が使われたのは14件、のべ21冊(既刊・新刊あわせ)でした。おそらく全体の1割くらいと思われます。
反省など
技術書典2は来場者が3100人で、今回が2750人っぽい(どこで比較したらいいかよくわからん)ので、11%減というところでしょうか?この記録的な悪天候のなか1割減で済んだのは運営の皆様の様々な施策のおかげだと思います。ありがとうございました。
さて、問題は来場者が11%しか減っていないのに頒布数が26%も減ったことです。1人あたりの購入数とかの統計がもし今回も出れば、これが全体のテンションの低下なのか(雨だし持って帰るのつらいみたいなのもあったと思う)、私の本の訴求力の低下なのか、どっちなのかがわかることでしょう。とはいえ、誰かも仰っていたように売るために書くわけではないので、特に流行の分野にすり寄っていく気はありません(Node.jsで肉を焼く、とかか?)。
ちなみにチェック数は前回の51から58に増えていて、前回はこの3倍売れましたが今回は2倍しか売れませんでした。他の報告ブログを読んでいる限り、ここが2倍にも3倍にもなっている人はあまりいないようなので、私のところが特にその場の勢いで買われがちなテーマなのでしょう(?)。
というわけでComic ZINさんで販売中だし買ってくれ!!!!http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=34593
Kindle版もあるよ。
[amazonjs asin=”B076JJ2RNZ” locale=”JP” title=”Effective 肉の固さ測定 (肉と鍋)”]
表紙について
チャレンジングな表紙という声もあがったという噂の今回の表紙ですが、べつに美少女の絵を売りたいわけでもないので、ユーザを引っかける役目としては満点だったと思っています。ポスタと相俟って肉のサークルであるということは自明オブ自明でしたし、よく機能してくれたのではないでしょうか。
他方問題となったのは表紙が似すぎていて、2冊あることがわからない、内容の差がわからないということでした。「新刊が固さで、既刊が温度です」と伝えればわかってもらえましたが、ここをもうすこしぱっと見でわかりやすくしたいところです。あと、文字が横を向いているのはなんとなくそっちのがいいかなと思いつきでやったんですが、どっちから読めば良いのかわからず不安にさせてしまいました。次はおとなしく普通の向きに書きます。とにかく絵師ではなくデザイナーに頼みてぇ……
ちなみに今回の内容は装釘・内容ともに今までで一番気に入っています。
感想
運営の方々が着実にいろいろな改善をされていたおかげか、前回以上に安心して参加し、そして強い気持ちで部数を増やすことができました。本当にありがとうございます。現代において紙の本をやりとりするというある種不合理?なイベントを最高に合理的に運営しようというスタンスは本当に素晴らしいと思います。是非今後も続いて欲しいと思いますし、参加したいです。
そして私の拙い本を買ってくださりありがとうございました。
お越し頂いた方とのコミュニケーション
・前作を読んで低温調理器を作りました。 → うおおお!!!!!
・「オフ会に行ったら低温調理器自作本を持ってきた人がいた」 → ???(紙媒体は拡散が水面下で起こる?)
・剪断応力は普通、断面積で正規化してパスカルで表すのでは? → ヒエッ… 手元の教科書(日本機械学会 材料力学)によると、生じる応力を剪断応力、断面積で割ったものは平均剪断応力と呼ぶが、この平均剪断応力を単に剪断応力として表すことも多い、と書いてありました。なので安直にどっちでもええんやなって感じで書いています。ちなみに食品の固さを測定する系の論文を読んでいた限りgやkgで表していたので、この分野ではあんまり断面積での正規化はしていないと思います。いずれにせよ、試料の断面積は揃えているので大きな問題にはならないかなと。
・電子レンジの中の温度を測るのに金属が入れられなくて苦労したことがある → それちょっと大変そうすぎてどう実現するのか…光ファイバーで実現したと仰っていたような気がしたので、赤外線放射温度計を使ったんですかね。
・JellyProの実物を初めて見たので興奮して話しかけてしまった(ヴェルテ何してるんだろ)
戦利品
戦利品 #技術書典 pic.twitter.com/gdIIfbl5fL
— naotaco (@naotaco) October 22, 2017
これからゆっくり読みますが、Gitオブジェクト本は次GitLabがぶっ壊れたときのために勉強しておきたい…。あとAIミニ四駆は実によかった。いまは普通のミニ四駆の方が速いというのがまた……。
今後
冬コミ当選した場合はふんだんに在庫のある既刊と、あとはお茶を濁す感じでポエムともエッセイともつかないものを書いて持っていこうかなという感じです。コピー本で。はじめての同人誌がオフセットだったのでコピー本をやったことがなく、1度くらいやってみたいなというアレ。名前だけ決まっていて、「肉と鍋と私」になります。