筑前煮を作ることにした。いままで何度か作ったことがあるが、毎回肉の固さが課題であった。さすがに根菜と一緒に1時間も煮込めば上等な鶏もも肉もぱさついてしまうのも当然である。そこで伝家の宝刀、どこのご家庭にもある低温調理器で肉をやわらかく調理し、普段通り煮込んだ根菜にマージする方法で進めることにした。本稿で筑前煮の詳細については触れないので、お気に入りのレシピをもって進めるとよいと思う。

低温調理器の自作については過去のエントリたちを参照いただきたい。自作ではなく普通に購入したいという奇特な方はNomikuとかAnova[ref][amazonjs asin=”B011BGXJQS” locale=”JP” title=”Anova Culinary Precision Cooker/Immersion Circulator (Black) 並行輸入品”][/ref]とかいうやつが便利らしいという噂なので、購入して知見を共有してほしい(納期に不安があるという話も聞く)。

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けっこう高いな……。

参考文献[ref]Cooking for geeks, および調理学[/ref]から私が学んだことをまとめると、

  • 根菜をやわらかくするには95℃以上の高温が必要
  • 肉[ref]動物の肉。畜肉。[/ref]は65℃くらいから硬化し始める
  • 味がしみこむのに温度が高い必要はない

の3点である。他にもあったら教えてください。

これらから、味をしみこませるために長時間煮込むことにあまり意味は無い(火を止めておいておけばよい)ばかりか、一緒に肉を煮込むなど正気の沙汰ではないということが導き出される(ほんとか?)。

そこで、

  • 鶏肉は軽く味をつけて低温で調理
  • その他のもの(主に根菜)は普通に筑前煮を作る
  • 筑前煮の温度が下がったら肉を筑前煮に統合

という方向で進めてみる。

鶏肉

まずは鶏もも肉を低温調理する。といっても味がないと厳しいので、筑前煮のレシピに従い下味をつける。酒の味はつけたいが、低温調理でアルコールが抜ける気もしなかったので、まずは軽く炒めて酒を飛ばしてからジップロックにイン、いつものとおり低温調理を開始する。

  1. もも肉(1枚)を一口大に切る
  2. 酒と醤油を振ってもむ
  3. 強火で短時間フライパンで炒め、アルコールを飛ばす
  4. 64℃で1時間調理
いつものように低温調理器へ
いつものように低温調理器へ

筑前煮

普通にレシピ通り作る。

今回の材料は、

  • にんじん 1本
  • こんにゃく 1枚
  • 里芋 4個
  • ごぼう 1本
  • たけのこ水煮 1個
  • だし

といった感じである。野菜をサラダ油とちょっとのごま油で炒めて適当に煮る。

野菜を突っ込んだあたり
野菜を突っ込んだあたり

だしは茅乃舎のやつをつかっている。とてもおいしい。

酒、みりん、砂糖、醤油(最終的な量のうち2-3割)を早めにいれて、落としぶたをして20分くらい煮込む。

落としぶた
落としぶた

火が通ったら醤油を足して味を調える。

野菜をのんびり切って煮込みおわる(火が通る)頃には鶏肉の調理が終わっている頃だと思うので、袋から取り出す。

低温調理後の鶏肉
低温調理後の鶏肉

ぷりぷりしていてうまい。これだよこれ。

これを筑前煮の鍋に放り込んで味をつけたいところであるが、あまり鍋の温度が高いうちに入れてしまうとせっかく低温調理をした肉が固くなってしまう。といってもずっと煮込むのに比べればだいぶマシだとは思うが、温度には気を配りたい。

また、袋の中の肉汁をどうするかは議論の余地があるように思う。普段ならあくとして出てくるような物が一部入っているはずなので、全部どばっと入れてしまうわけにはいかないが、鶏肉の出汁は捨てがたい。今回は折衷案として、漉して入れた。

ミスった
ミスった

かくいう私も肉を入れてから温度を測ってみたところ80℃近くあって頭を抱えていた。人間の感覚は当てにならない。特に直接触れない領域では。

入れてしまったものは仕方ないので、このまま冷ましながら味がしみるのを待つ。できれば一晩待ちたいところだがそうもいかないので、1時間くらいほかのおかずを作って耐える。

暇つぶしに作ったれんこんのはさみ揚げ
暇つぶしに作ったれんこんのはさみ揚げ
完成
完成
うまい
うまい

野菜はいつものように、肉は普段よりやわらかくしっとりとしていてうまかった。定番メニューのときも低温調理を活用していきたい。

最高の参考文献はこちら:

[amazonjs asin=”4873115094” locale=”JP” title=”Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)”]

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